マスタリングとミックスの違い
何をどちらでやるべきか。ミックスは「曲の中のバランス」、マスタリングは「曲全体の仕上げ」。マスタリングにできること・できないことも正直に書きます。
どちらも「音を良くする」作業に見えますが、扱う対象がまったく違います。 ここを取り違えると、マスタリングで直らない問題を延々といじることになります。
ひとことで言うと
| ミックス | マスタリング | |
|---|---|---|
| 対象 | 複数のトラック(楽器・声) | 2ミックス(完成した1本の音源) |
| 目的 | 曲の中のバランスを作る | 曲全体を聴ける状態に仕上げる |
| やること | 音量バランス・定位・各トラックのEQ | 全体のEQ・音圧・ラウドネス・曲間の統一 |
| 直せるもの | 「ボーカルが埋もれる」 | 「他の曲より小さい」 |
生成AIで曲を作る場合
Suno や Udio が出力するのはすでにミックス済みの2ミックスです。 個々の楽器トラックは手元にありません。
つまり、生成AIで曲を作る人にとってはミックスの工程が存在せず、 できるのはマスタリングだけということになります。 これは制約でもあり、同時に「やることが明確」という利点でもあります。
マスタリングでできること
- 配信の基準に合わせてラウドネスを整える
- 歪まない範囲でピークを抑える(リミッター)
- 全体の帯域バランスを少し動かす(EQ・マルチバンド)
- 不要な超低域を落とす(ローカット)
- 倍音を足して輪郭を出す(サチュレーション)
- 曲間の音量差を揃える(アルバム統一)
マスタリングでできないこと
ミックス以上のものは出せません。これは道具の性能ではなく、原理的な限界です。
- ボーカルだけ上げる — 2ミックスからは分離できません (ステム分離の技術はありますが、劣化を伴います)
- 濁った低域をきれいにする — 複数の楽器が同じ帯域で重なっているのが原因なので、 全体EQで削ると必要な音も一緒に減ります
- 団子になった音像をほぐす — 定位はミックスで決まっています
- 音数を減らす/増やす — 当然ですが不可能です
これらに当たった場合、生成AIならプロンプトを変えて作り直すのが正解です。 マスタリングで粘っても、多くの場合は時間の無駄になります。
どこまでやれば「終わり」か
判断基準を1つだけ挙げるなら、ラウドネスを揃えて聴き比べて良くなっているかです。
音量が大きいほうが良く聴こえるのは人間の耳の性質なので、 音量差がある状態で比べると必ず「処理後のほうが良い」と感じます。スタジオの A/B 比較で「ラウドネス整合」を ON にして聴き比べ、 それでも良くなっていれば本当に良くなっています。変わらなければ、そこが終わりです。
具体的な手順は Suno / Udio で作った曲を仕上げる方法、 数値の意味は LUFS とは? を参照してください。